年老いた両親を妹が信州の田舎から見舞いに連れて来てくれた。
久し振りで家族4人で会った。以前にも両親は見舞いに時々
来てくれてたけれど、身体のチューブが全て外れて寝たきり
でない“まとも”な私と会うのはこの時期が初めてだったと思う。
看護師さん達の勧めもあって病院にあるレストランで家族水入らず
で食事をした。
「カツ丼でも天丼でも好きな物をお腹いっぱい食べて来るのよっ!」
ってナースステーションで言われて、、、
「かつどん? てんどん? おなかいっぱい?」
とてもお陀仏病棟の看護師さんの言葉ではないと内心可笑しかった。
↓病院にあるレストラン「いこい」。

ここには和、洋、中、甘味といろんなメニューが揃っていて食事時
には結構賑わってる。。。前から一度行ってみたいと思っていた。
大腸のない私は常に脱水症状の一歩手前、、、どうしても汁っぽい
物が欲しくなる。病院での食事は出された量の半分程度まで食べ切
れる程になっていたけど、、、
両親の手前、頼んだ物を残すのは回復が遅れてるのを物語るようで
嫌だった。一番食べたかったラーメンを頼んで頑張って全部食べ切
った。食物をキチンと自分の口で摂取して、大人の普通の量を平気
で食べてるのを見せないと申し訳ない気分だった。
久し振りに食べるラーメン、、、何てことない普通の醤油味のラーメン
だったけどお腹の隅々にまで滲み渡って美味しかった。
顔が明るくなって食事も食べれるようになった私を見て両親も安心
したみたい。。。
サイボーグのストマの漏れは相変わらず未解決。
それ以外にもたくさんの問題が山積みだった。
・褥瘡(手の平位)
・お腹の術創(縫合不全)
・体重(50kg程度)
・筋力(辛うじて歩ける程度)
・コレステロール(不足)
・鉄(不足)
・白血球数(慢性的に高い)
平坦な所を歩く事や、イスから立ち上がる程度の運動能力は回復
していたけど、、、冷蔵庫の下の物なんかを取ろうとして不用意に
しゃがんだりすると立ち上がれない!!
決定的に全身の筋力が低下していた。これじゃとても滑れん!!
考えた、、、
そうだっ!今日から徹底的に重力に逆らって生きよう。
主治医のカッシーが言うには2ヶ月寝たきりなら元に戻るには
その倍かかるんだそうな。。。4ヶ月かかったら今シーズン中に
滑るのは無理。雪が無くなっちゃう。。。
↓その日からサイボーグのリハビリの場になったC棟の階段。

貧血はかなり減ったし、ここはナースステーションからすぐの場所。
何かあっても大声出せば助けてもらえる。重力に逆らって動けば
血の廻りも良くなって傷も治るし、効率的に失った筋力が取り戻せる。
筋肉の細胞が無くなった訳じゃなくて萎んだだけ、、、。
最初は昇り5~6段がやっとだった。降るのは到底無理。
階段を降るのは恐怖以外の何者でもなかった。。。
まったく重力って奴は忌々しい。
5Fまで何とか昇ってエレベーターで戻って来る。その繰り返し。
病室にはほとんど居なくなった。暇さえあればタオルを首に巻いて
この階段に居た。
自分の落した汗で滑らないように注意。この階段は救命救急センター
と繋がっていて、一般の人はほとんど通らない。リハビリには好都合
の場所だった。
たまに職員とすれ違ったけど、皆一様に分かった様子で道を譲って
くれた。
たくさんの問題を抱えていたけど、メソメソ後ろを振り返るのはヤメ。
ガラクタの寄せ集めのサイボーグだけど、1つ1つのパーツを磨き上げ
ればきっと美しくなると信じた。
こうしてまたまた独りぼっちの階段との格闘が始まりました。
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